- 断られた理由は、値上げ幅・時期・条件のどこにあるか
- 条件を変えれば、採算と資金繰りは改善するか
- いつまで続け、どの条件で再検討するか
第2回では、原価の変化、希望価格、計算根拠、代替案を1枚にまとめる方法をご紹介しました。
十分に準備して交渉しても、希望どおりの回答を得られるとは限りません。しかし、「今回は難しい」と言われた時点で、直ちに交渉が終わるわけでもありません。
値上げを断られた後に必要なのは、同じ要望を繰り返すことではなく、断られた理由を分けて確認し、価格以外の条件も含めて採算を組み直すことです。
まず、何が難しいのかを確認する
「値上げはできない」という回答にも、いくつかの理由があります。
- 値上げ幅が大きく、予算に収まらない
- 実施時期が早く、社内決裁が間に合わない
- 根拠資料が不足している
- 販売先への価格転嫁ができていない
- 同等品や他社への切り替えを検討している
理由が分からないまま値上げ幅だけを下げると、必要以上に譲歩することになります。誰が決裁するのか、追加で必要な資料は何か、いつなら再検討できるのかを確認します。
口頭で断られた場合も、協議した内容と回答を記録しておくことが重要です。
値上げ幅や実施時期を分ける
満額の改定が難しければ、段階的な改定を提案できます。
たとえば、改定率を2回に分ける、対象商品を絞って先に改定する、一定期間後に原価の変化を再確認するといった方法です。
ただし、段階的にするほど自社が負担する期間は長くなります。各案について、いつまでに、いくら不足するのかを試算してから提示します。
価格以外の条件を見直す
取引条件を変えることで、自社の負担を減らせる場合があります。
- 小口・多頻度の発注をまとめる
- 短納期や休日対応を減らす
- 過剰な仕様、検査、包装を見直す
- 配送条件や納品場所を変更する
- 支払サイトを短縮する
取引先にも利点がある案を探しながら、条件変更による削減額を計算します。単に作業を減らすのではなく、品質や供給にどのような影響があるかも双方で確認します。
売上高ではなく、限界利益と資金繰りで判断する
長年の取引や売上規模の大きさだけで、継続を決めてはいけません。
判断材料の一つが限界利益です。限界利益は、売上高から、その売上に応じて増減する材料費、外注費、運送費などの変動費を差し引いた金額です。これがマイナスであれば、受注を増やすほど損失が広がります。
一方、限界利益がプラスでも、それだけで長期継続が妥当とは限りません。固定的に発生する人件費や設備費などを回収できるか、手間のかかる取引が他の受注機会を圧迫していないかも確認します。
さらに、入金より先に仕入代金や給与の支払いが発生する取引では、利益が出ていても資金繰りが苦しくなることがあります。支払サイト、在庫期間、追加投資の有無まで含めて判断します。
赤字受注を続けるなら、期限を決める
重要な取引先との関係、新製品の立ち上げ、余剰能力の活用など、理由があって一時的に赤字受注を続ける判断もあります。
その場合は、「当面継続する」で終わらせず、次の項目を決めて記録します。
- 赤字を許容する期限と上限額
- 次回の交渉日
- 再交渉の条件となる原価や数量の変化
- 改善しなかった場合に縮小・終了する範囲
- 取引を終了する場合に必要な契約上の手続き
撤退判断は、感情的な絶縁ではありません。損失を数字で確認し、縮小、条件変更、代替顧客の開拓などの手順を組み立てる経営判断です。実際に取引を終了する際は、契約内容や供給責任も事前に確認します。
交渉結果を、次の判断につなげる
価格交渉は、一度の面談で完結しないことがあります。だからこそ、提示内容、相手の回答、合意事項、残った課題、次回協議日を記録します。
今回の3回連載でお伝えしたのは、話し方の技巧ではありません。原価を把握し、根拠を1枚にまとめ、断られた後も採算と資金繰りで判断するという一連の準備です。
価格交渉後の条件見直しや、赤字取引の継続判断については、お問い合わせフォームよりご相談ください。
